『母の胎内にいる時』

母の胎内にいる時私たちの体は細菌のまったくいない無菌状態なのだが、ひとたびこの世に生まれてきた瞬間から、おびただしい数の細菌が侵入してきてすみつき、そのバクテリアたちと一生をともにすることになる。

『腸内細菌』とひとくくりにして呼ばれる微生物がそれだ。

約10メートルの長さをもつ成人の消化管の中には、300種類1000兆個の腸内細菌がすみついている。

消化管壁にびっしりついる腸内細菌を集めると、ほぼ1キログラムにもなるというが、それらは宿主たる私たちの食べものを栄養として生きていている。しかし彼らは何もしないで、ただ私たちに寄生しているというわけではない。

腸内細菌の種類によって役割が異なるのだが、あるものは、食べたものを分解して消化吸収を手助けし、またある腸内細菌は、ビタミンを生産したりホルモンや生理活性物質などを作り出して私たちに貢献している。

免疫力を活性化させ感染防止に一役買っているものもあれば、肝臓や腎臓の働きを高めるものもある。これらを善玉菌と言う。

その一方で、腐敗を起こし体の機能を阻害する毒性物質を作り出す悪玉菌もある。

発がん物質さえ生産するのだ。

善玉菌90%、悪玉菌10%の比率が人間の生命活動にとって最もいい腸内細菌叢(そう)の状態である。

そのバランスが崩れたときでも、有効な善玉菌を意図的に投入してやれば、健康を回復させることができいるのではないか。

そう考えた研究者たちが、特に人間の健康復元に役立つ腸内細菌を求めてスクリーニングを続けた。

そいしてついに発見された最強の一株が『エンテロコッカス・フェカリス・AD株』だったのである。略し『コッカス菌』だ。